推薦文が入ります。
光りに描かれた絵画
2016年6月、世界有数の日本絵画コレクターであるジョー・プライス氏が、戸田正寿宅を訪問。「光のキャンパス」に再現された若冲の絵に、まだ感受し得なかった新たな面があることを知って驚嘆した。単色に見える線の微かな色の変化、色面に奥行きを出すための絵具の暈しや滲み具合、さらには筆跡や支持体の布の折り目まをも、生き生きと感じ取ることができたのだ。プライス氏ははじめて若冲の絵の細部と全体の成り立ちを理解できたと感激し、光のキャンバスによる更なる若冲作品の再現を熱望したと言う。
太陽光の美しさに匹敵するような新しい光をつくれないか。そう発想して開発された「光のキャンバス」。約4年の年月を費やして完成した光のキャンバスは、極限まで光を透過する描画技術によって全く新しい媒体となり、光と絵画の関係性を一新するものとなった。作品全体を豊かな光で美しく見せることができるだけでなく、マチェールの凹凸等細部を忠実に描出し、絵のディテールを明示することが可能となったのだ。光のキャンバスに再現される絵画は、光を背後から受けて、生まれ変わる。
西村直樹(福井県立博物館主任学芸員)